エンジニア教育が重要視されている理由は?実施の課題やポイントも
エンジニア教育が重要視されている理由は?実施の課題やポイントも
本コラムでは、情報システムの開発やSESを事業としている企業において、これからセキュリティエンジニア育成に取り掛かろうとお考えの経営者や事業責任者の方に向けて、教育の課題や手法について解説いたします。
エンジニアは、工学に関する専門的知識や技術を有する人のことです。開発業務に携わるエンジニアは、ITエンジニアやシステムエンジニアと呼ばれており、DX化が進む近年では多くの企業で重宝されている職種となります。
ITエンジニアは存在価値が高まっている一方で、慢性的な人手不足に陥っていることが実情です。セキュリティに対応できるエンジニアは特に少なく、IT業界における多くの企業においては「エンジニア教育」の必要性が非常に高まっています。
そこで今回は、エンジニア教育が重要視されている理由から、エンジニア教育における課題点、さらにエンジニアの教育方法・成功させるためのポイントまで詳しく解説します。
1.エンジニア教育が重視されている理由
クラウドの普及に伴い、ITエンジニアの需要はより高まりました。その一方で、エンジニアの慢性的な不足が深刻な問題となっています。優秀なエンジニアの採用ができないだけでなく、「正社員求人や派遣求人を出すにしても、自社に適したエンジニアかどうかの見極めが困難」といった問題にも、多くの企業が直面しています。
そこで重要なのが、エンジニア教育です。エンジニア教育とは、その名の通り現場で業務をこなすエンジニアに向けた教育であり、既存の社員を教育することによって「現場を知るエンジニア」を育てられるでしょう。また、育ったエンジニアにより社内の教育体制が強化される効果も狙えます。
1-1.中でも需要が高まっているセキュリティエンジニア
エンジニアとひとくちに言っても、IT業界で働くエンジニアはITエンジニアと呼称するように、さまざまな分野があります。その中で、幅広い業界で必要とされるエンジニアとして「セキュリティエンジニア」の需要が近年ますます高まっています。
セキュリティエンジニアとは、情報セキュリティに特化した業務を担うエンジニアのことです。
DX化の広がりによってシステムが多様化した近年、サイバー攻撃も多様化・複雑化しました。この状況に応じて多様化・複雑化する対策に必要なセキュリティエンジニアは、ITエンジニアよりも不足が深刻です。
そのため、セキュリティエンジニアのニーズは大きく、単価は年々上がっています。しかし、セキュリティスキルを身につけていないエンジニアではニーズに対応できず、単価を上げることも難しい状況です。
そこで、教育によりエンジニアがセキュリティに対応できるようになれば、単価を大幅に上げることが可能です。また、競合他社との差別化にもなります。
2.エンジニア教育の課題
エンジニア教育の必要性が高まっている一方で、実際に行うとなればあらゆる課題が生じる可能性もあることに注意が必要です。特によくあるエンジニア教育の課題は、次の通りとなっています。
- 教育体制や人材が不十分である
- キャリアマップ設計が不十分
- エンジニア育成に関する戦略が不明瞭
- 離職率が高い
ここからは、それぞれの課題について概要と課題策を交えながら詳しく紹介します。
2-1.教育体制や人材が不十分である
エンジニア教育を行うとなれば、対象となるエンジニアを育成するための担当者も必ず必要となります。一方でセキュリティに関するエンジニアは従来希少であり、教育担当者を担えるエンジニアが不足している場合は、教育体制を十分に整えることができず、エンジニア教育が進まないといったことが起こりえます。
エンジニア教育をしっかり行うためには、まず教育体制を整えることが大切です。社内にリソースを割けない場合は、外部研修など外部リソースを活用するのも1つの手段と言えるでしょう。教育体制を整えるためには、経営者や事業部門責任者がエンジニア教育について強いコミットを示すことが1つの成功要因となります。
2-2.キャリアマップ設計が不十分
働く動機として個人の成長が挙げられます。成長の流れが見えなければ、教育機会を提供しても戸惑いや不安を与えてしまうことがあります。個人がどのようなキャリアを志向し、成長していきたいかについてOneOnOneなどでヒアリングした上でキャリマップを設計し、どのような教育を提供するのか検討することが求められます。キャリアマップと教育機会が整合していることが重要です。必要に応じ人事部門と連携して設計を行うことも必要になります。
2-3.エンジニア育成に関する戦略が不明瞭
教育は戦略です。どのような人材を育成していくかについては、市場動向の見極め、経営戦略との整合が必須です。市場ニーズ、経営戦略と合致を明確にし、適合する人材を育成することが求められます。育成する人材像を明確にすることができて初めて、どのような教育機会を提供するかが決まります。そのため経営との連携が欠かせません。また、前述したキャリアマップとの整合も取る必要があります。
2-4.離職率が高い
IT業界は、ほかの職種と比較して激務であることが多く、システム開発などにおいてはクライアントの要望が突然変更されるうえ、納期の前倒しを要請されるケースもあるでしょう。長時間労働によって、精神面・身体面の不調に陥るエンジニアも珍しくありません。
その一方で、世間では働き方改革が推進されているうえ、人材採用は買い手市場となっています。転職へのハードルが非常に低く、エンジニアの離職率が高まっていることも実情です。
人材育成や訓練によってスキルアップしたエンジニアが、結果としてさらに待遇のよい職場へ転職してしまう可能性があるため、前述したキャリアマップとの整合による動機づけや個々の能力に応じて適切に待遇を改善させることも重要と言えます。
3.エンジニア教育の方法
エンジニア教育の方法は、主に「OJT研修」「社内研修・勉強会」「社外研修」「社員の独学」の4つが挙げられます。
【OJT研修】
概要 | 現場での実践研修 |
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メリット |
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デメリット |
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【社内研修・勉強会】
概要 | 自社で実施するエンジニア向けの勉強会 |
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メリット |
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デメリット |
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【社外研修】
概要 | 外部の研修サービスを利用した研修会・勉強会 |
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メリット |
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デメリット |
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【社員の独学】
概要 | 研修や勉強会での学習ではなく、社員が各自好きなタイミングで行う学習 |
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メリット |
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デメリット |
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OJT研修は、職場の上司や先輩エンジニアが、実際の仕事を通じて指導し、必要なIT技術・スキルを身につけさせるというものであり、新人エンジニアや未経験者に向いた人材育成方法です。
社内研修・勉強会や社外研修は、その時に習得してもらいたい専門スキルや目指してほしいキャリアを明確にしたうえで、適切な研修内容・研修コースを選定しましょう。
また、社員の独学はその他の教育方法と併用して行わせることが大切です。社員の自主性を尊重しつつ、資格手当や教材費の負担などといった補助制度を導入することもポイントとなります。
4.エンジニア教育を成功させるためのポイント
エンジニア教育を成功させたい・より効果的に行いたい場合は、次のポイントをおさえておきましょう。
- 自社に必要な人材やスキルを明確にする
- 社員の現状を把握する
- 段階的な目標を定める
最後に、エンジニア教育を成功させるためにおさえておきたいポイントについて、それぞれ詳しく解説します。
4-1.自社に必要な人材やスキルを明確にする
エンジニア教育を成功させるためには、市場ニーズ、経営戦略と整合する人材像を明確にすることが第一歩になります。求める人材像が明確になることで、キャリアマップや教育プログラムが決まります。経営陣や人事部門などと連携しながら進めることが推奨されます。
4-2.社員の現状を把握する
自社に必要な人材やスキルを明確にした後は、社員の現状を把握しましょう。OneOnOneなどを通じ社員が望むキャリアを明確にし、成長に資する教育機会を提供すること、さらには市場ニーズ・経営戦略と整合したキャリアマップ設計が整合することが、個人を動機づけることにつながります。個人の成長意欲と会社の目指す方向性そして教育機会が合致することでロイヤリティが高まり離職率の低減にも寄与します。
4-3.段階的な目標を定める
短期間でエンジニア教育プログラムを設定することは、教育対象者にプレッシャーや焦りを与えてしまい、早期退職にもつながりかねません。そのため、エンジニア教育は段階的な目標を定めて、長期的な視点で実施することが大切です。
また、最初に設定した目標通りにすべてがうまくいくわけでもありません。教育対象者の成長度合いに応じて柔軟に修正できるようなプログラムを組み立てていくことも大切と言えるでしょう。
まとめ
エンジニア教育とは、その名の通り現場で業務をこなすエンジニアに向けた教育のことです。エンジニア教育の実施によって、新入社員・既存社員のスキルアップや社内の教育体制の強化につながります。
その一方で、エンジニア教育を実施するにあたって「教育体制」「キャリアマップ設計」「エンジニア育成戦略」「離職率の高さ」など、エンジニアならではのあらゆる課題にも直面するでしょう。エンジニア育成の効果を最大限高めるためには、市場ニーズ・経営戦略と整合する人材像の明確化、個人のキャリア志向の明確化を通じ、それらと教育機会を整合させることが大切です。そうすることが個人を動機づけ、離職率抑止にも寄与します。
「GSX」では、情報システム部門・システムを受託開発する企業・SES事業を行っている企業に所属するエンジニアを対象とするセキュリティ教育サービスを幅広く提供しております。セキュリティエンジニアを育成したいものの、適切な教育プログラムがない・教育担当者がいない・社内リソースに余裕がないという方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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