楽天グループ株式会社様

楽天グループのCISO(Chief Information Security Officer)が「CISO講座」を受講。
多様な業態、グローバルでの拠点を展開する楽天グループならではのセキュリティ対策への姿勢とCISOに求められる役割とは?

2025年4月15日 Case Study
楽天グループ株式会社 様

楽天グループ様は1997年5月にインターネット・ショッピングモール『楽天市場』を開設、従業員6人、サーバー1台、13店舗で歴史が始まりました。現在でも三木谷 浩史代表取締役会長兼社長がグループを率い、2025年2月時点でグローバルのサービス展開拠点数30か国・地域、グループサービス利用者数約19億、サービス数70超、グローバル取扱高40兆円超を誇る、日本を代表する企業です。(最新の企業情報はこちら)

楽天グループでは多くのインターネットサービスを提供しており、セキュリティを最重要経営課題の一つとしてグループ一丸で取り組んでいらっしゃいます。楽天グループ各社にはCISOが設置されており、この度、本社CISO及びセキュリティ部門の責任者に「CISO講座」をご受講いただきました。

楽天グループ株式会社でグループCISOを務めていらっしゃる福本 佳成氏に、同社のセキュリティに対する意識や姿勢、セキュリティ対策への取り組みや体制、CISOに求められる役割など、幅広くお話をお伺いしました。

目次

  1. 楽天グループ セキュリティ対策にかける背景と想い
  2. 楽天グループのセキュリティ水準を高く維持し続けるCISOガバナンス
  3. セキュリティ人材の育成と評価
  4. CISOという重責と求められること
  5. CISO講座は経営視点で俯瞰した示唆を得ることができる
  6. CISO講座ご紹介
導入サービス

CISO講座

対談者プロフィール(※所属・役職は取材時現在のものです)
楽天グループ株式会社 福本 佳成 氏
楽天グループ株式会社 上級執行役員 インフォメーションセキュリティ統括部 ディレクター サイバーセキュリティディフェンス部 ジェネラルマネージャー
福本 佳成氏


2002年に楽天株式会社(現 楽天グループ株式会社)に入社。楽天グループのサイバーセキュリティを担当。主には安全なソフトウェア開発の推進とセキュリティ運用を担当している。2007年にRakuten-CERTを設立。Rakuten-CERT Representative。活動開始時よりOWASP Japan Advisory Boardを務める。東京工業大学(現 東京科学大学) サイバーセキュリティ特別専門学修プログラム 特定教授。
楽天グループ セキュリティ対策にかける背景と想い
楽天グループ株式会社 福本 佳成 氏

▼福本氏
楽天グループは代表取締役会長兼社長の三木谷 浩史が1997年に設立し、今も経営のトップとしてグループを率いています。「楽天市場」は三木谷が立ち上げたサービスであり、現在も強い想いを持ってサービスを推進しています。楽天グループが提供しているサービスの多くはインターネットサービスであることから、セキュリティは経営の最重要課題の一つとして経営陣に認識されています。三木谷が経営のトップとして創業時から関与し続けることで、事業の成長と同じレベルで、セキュリティに対する高いコンセンサスを維持し続けられる点も、セキュリティ対策を進めていく上で大きな強みになっていると考えています。

GSX 三木 剛

▼GSX三木
サイバー攻撃を受けた際の事業への影響は大きく、あらゆる企業にとって経営課題です。セキュリティ対策の必要性認識が広がっている一方で、セキュリティ対策を経営課題として捉えられている企業はまだ少ないことが実態です。私はそのような状況を改善すべく、経営層向けの勉強会を全国各地で実施し、セキュリティ対策を経営課題として捉えていただけるよう尽力しています。

▼福本氏
楽天は、「楽天市場」や「楽天トラベル」などのインターネットサービス、フィンテック、通信などにおける70以上のサービスを国内・海外で提供しています。たくさんのパートナー様と利用者様のビジネスや生活をご支援する社会基盤となっており、システムを止めることは社会的責任としても許されません。サービスに関わる皆様を守っていくことが、楽天グループのセキュリティ担当としての責任であり、我々のモチベーションにもつながっています。

前述の通り、セキュリティは経営課題であるという認識は創業当初からありました。セキュリティ対策に昔からの投資や運用経験が積み重なることで、セキュリティの成熟度は高くなっていると考えています。

楽天グループのセキュリティ水準を高く維持し続けるCISOガバナンス
楽天グループ株式会社 福本 佳成 氏

▼福本氏
新規サービス立ち上げやM&Aなどを通じて、楽天グループとしてお客様にご提供するサービスが増え、グループ会社が増えていくに伴い、グループとしてのセキュリティレベルを高い水準に保つことが課題となりました。また、事業拠点も世界各地に存在するようになり、セキュリティを中央管理する必要性が高まりました。会社ごとのセキュリティ対策状況の差異、セキュリティ人材やノウハウの不足といった課題を継続的に対処してきました。

そのような背景を受け、2015年にCISOが任命され、グループ全体としてのセキュリティガバナンスをより一層強化・推進できる体制が整いました。2016年には各社にCISOを立て、楽天グループCISOコミュニティを立ち上げました。楽天グループには様々な業態があり、すべての会社を同じポリシーで運用することは現実的ではありません。そのため、ベースとなる共通のポリシーを策定し、各社の所属する業界団体等の要請に合わせ、カスタマイズして運用しています。共通ポリシーを策定することにより、ベースラインのセキュリティレベルが確保され、セキュリティ対策の実効性が高まっています。

現在グループの数十の組織にCISOが設置されています。各社のCISOが集う定例会議、年次のグローバルCISOサミットを実施するなど、コミュニケーションを密にして情報連携を図っています。CISOが設置されることで、各社におけるセキュリティ責任者が明確になり、セキュリティ対策を強力に推進できる体制となっています。

楽天グループ情報セキュリティ 構成図

出展:楽天グループ 情報セキュリティ https://corp.rakuten.co.jp/sustainability/security

セキュリティ人材の育成と評価

▼福本氏
人材育成は人事部門の制度として全社員に対して細かくプログラムが設定されています。セキュリティを担う人材は、グループ会社に対するセキュリティサービス提供の役割も担っていることから、サービスクオリティを担保するためにもセキュリティ資格(OSCP、SANSの上位クラスなど)を取得する必要があります。資格取得については力を入れております。

また、広義なセキュリティ人材の育成という観点では、産学連携を行い、2016年から私を含む当社社員が大学の講師を務め、講義を提供することでセキュリティ人材の育成に貢献しています。講義をきっかけに当社にご入社いただける学生の方も多くいらっしゃいます。

CISOという重責と求められること
楽天グループ株式会社 福本 佳成 氏

▼福本氏
CISOに求められることは、シンプルには「セキュリティ事故による被害が起きないこと」に尽きます。CISOは会社、事業を守る責任のある仕事であり、相当の覚悟が求められます。一般的にCISOは独立して機能していますが、日本では兼務である状態が多いなど責任境界線が曖昧なように思います。この点についてはCISOのモデルを成熟させていくためにも我々においても課題意識があります。楽天グループでは、セキュリティレベルを向上させるために、毎年セキュリティ戦略を策定し、計画に基づいたプロジェクトを進行させています。安全なモノづくりを基本に、デザインしたセキュリティ施策が、ベストだと思っているレベルまで実践されることが大事です。

セキュアな状態=経営の意識+セキュリティ戦略+人材+予算
GSX 三木 剛

▼GSX三木
日本ではCISOの設置がまだまだ進んでいないという調査データがあります。CIOとCISOを兼務しているような企業も見受けられます。そのような課題を解消することも目的として「CISO講座」が立ち上がっています。CISOは責任も重い職責であると捉えています。CISOのロール、レスポンシビリティ、成果、評価などの整備が今後ますます進んでいくことが期待されています。セキュリティが事業継続上の大きな課題であり、有事になれば経営に支障が出るという観点からは、その重責を担うCISOは企業にとってのナンバーツーとも言えるのかもしれません。

CISO講座は経営視点で俯瞰した示唆を得ることができる

▼福本氏
私はエンジニアとしてキャリアをスタートし、現場で経験を積みながら、CISOの役割に就きました。「CISO講座」を受講することで、経営の視点をもってセキュリティをどのように捉え、対応をしていくのかといった俯瞰的な経営視点を再確認することができました。前述の通り私は楽天グループのCISOとしてグループ各社のCISOを束ねる立場にあり、各社のセキュリティをマネジメントしていくにあたり、各社CISOとの共通言語・考え方を持ちたいと考えていました。JNSAが提供しているCISOハンドブックの利用を考えていたところ、GSX様より「CISO講座」をご紹介いただき、グループ各社のCISOで受講することになりました。私のように現場のエンジニアからCISOに就任するケースはあると思いますので、経営視点からセキュリティマネジメントを捉えることができるようになる「CISO講座」は、現場経験の長い方のキャリアパスには有用な講座であると感じます。

▼GSX三木
CISOに至るキャリアパスは、CIOが兼務する以外に、現場エンジニアを経験して就任するケース、経営から就任するケースが多いように感じます。前者の場合は監督・マネジメントといった経験が不足しがちになるため、経営の視点経験を補う必要があると考えます。後者の場合は技術的な視点を養うことが求められます。GSXは「CISO講座」の提供を通じ、CISOのあるべき姿、CISOに求められる知識をお伝えすることで、CISOの育成に貢献して参ります。

楽天グループ株式会社 福本 佳成 氏とGSX 三木剛
ポイントの整理
  • セキュリティは経営課題という認識
    経営陣がセキュリティは経営課題であるという共通認識を持つことで高いレベルでセキュリティ対策を実現していらっしゃいます。
  • 共通言語・考え方を持つ
    対策を進める関係者が共通言語・考え方を持つことで同じ視点でセキュリティ対策に取り組んでいらっしゃいます。
  • 経営視点でのマネジメントを身に付ける
    技術者からのキャリアパスを通じてCISOに就任する場合、俯瞰的な経営視点を持つ機会が少ないことがあり、CISO講座が有効であるとの評価を頂きました。
導入会社プロフィール

会社名

楽天グループ株式会社

本社所在地

東京都世田谷区玉川一丁目14番1号

設立

1997年2月7日

資本金

446,768百万円(2023年12月31日現在)

従業員数
(2023年12月31日現在)

単体:10,350名
連結:30,830名
※ 使用人兼務取締役、派遣社員及びアルバイトを除く就業人員ベース

代表取締役会長兼社長

三木谷 浩史

CISO講座ご紹介

CISO講座

「CISO講座は、CISOまたはCISOを支える人材を対象に、CISOが学ぶべき事柄やCISOがなすべき事柄について、 経営陣や経営幹部として理解しておくべきポイントを短時間で学習できる講座です。企業のセキュリティを司るCISOのために設計された専門講座です。

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